卯年の今年は『因幡の白兎』効果で正月から盛り上がった鳥取。特に大国主命と白兎伝説で有名な白兎海岸の白兎神社は例年の数倍の参拝客で賑わったとか。
私も既に当ブログで述べたように伝説と夕陽に魅せられて何度も訪れた。しかし、もう一つの白兎伝説と白兎神社があると聞いて、そちらにも昨年行ってみた。
その神社は白兎海岸の白兎神社の賑わいとは真逆で、田んぼの中にひっそりと佇んでいた。鳥居や兎の像は有るものの、小さなお堂みたいなのが残るだけの寂しい神社。
その時、社殿は同じ八頭町の成田山青龍寺に移してあると知って、いつか行ってみたいと願っていた。厳寒の正月から7ケ月遅れの真夏の詣でをリポートしてみる。
もう一つの白兎伝説
皆さんがご存じの白兎伝説は、出雲の国から絶世の美女として名高い八上姫に会いにきた出雲の神々が、ワニに皮を剥がれて泣いている白兎に嘘を教えて症状を悪化させてしまう。
そこへ兄弟の神々から遅れて通り掛かった大国主命が正しい治療方法を教えて助けてやる。結局、八上姫が選んだのは心優しい大国主命だったという神話。
しかし、八頭町に残る伝説は趣きがだいぶ違っている。昔、天照大神が降臨された時に中山という山の山頂に行宮を営もうとされた。その際、一匹の白兎が現れ尊の装束の裾を咥えて別の山に案内したという。
しばらく行宮されたという所に伊勢ヶ平、皇居石などの名前が残っている。そして、案内した白兎は天照大神と共に生まれた三貴子の一人の月読尊と言い伝えられ、中山の尾根続きの四ケ村の氏神として崇められたそうです。
八頭町成田山青龍寺
名前でも分かるように、八頭町の成田山青龍寺は有名な千葉県の成田山新勝寺からお不動様を勧請した事により名付けられたもの。規模などは新勝寺に敵うべくもないが、こちらも710年行基創建というなかなかの由緒を持っている。
もともとは、上記の天照大神が現れた中山の山頂にあった花喜山浄光寺という寺で、現在の所に移ったという。その開山の時の三体の仏像が現在も青龍寺に納められていて、年3回公開されている。
更に驚きなのは、成田山青龍寺は真言宗の寺なのに、初めに述べたもう一つの白兎神社と言われる八頭町福本にある白兎神社の社殿を移築して本堂内に残っている事。全国でも珍しいお寺の中に神社の社殿がある寺として有名。
風鈴の音色独り占め
私が青龍寺を訪れたのは夏休みを前に更に一日オフにした37度超えの8月に入ったばかりのある日。鳥取駅から出ている智頭急行や若桜鉄道が通る2つ目の東郡家駅下車。駅舎もなくコンテナ様の待合室とトイレだけの無人駅。
徒歩20分ぐらいというナビのアプリを頼って、途中迷いながら何とかたどり着いた青龍寺は小高い丘の上。炎天下の中フラフラになりながらたどり着いた体を労るように、涼風とお目当ての風鈴が出迎えてくれた。
涼やかな風鈴の音色を楽しみながら廊下に座って涼をとる事数十分。目の前の赤い絵馬掛所と鐘楼の上に広がる青空に本来の目的を思い出して撮影開始。神殿、鐘楼、風鈴、更に長い石段を上った先には絵のような田園風景。
夢中でシャッターを切る間、寺の人も参拝客も誰一人姿を現さなかった。風鈴に癒されてはまたカメラの繰り返しで約2時間。快晴の絶景の中、炎天を忘れされてくれるような涼感たっぷりの贅沢で優雅な一時を過ごさせて頂いた。