快晴の下、風が強い中で行われた旧暦3月3日の用瀬流し雛。え、今頃と思う方も多いでしょう。今年は約3年に一度の閏月で2月の次に閏2月が挿入され、旧暦3月3日は新暦から50日遅れた4月22日になりました。
春先から高温が続き暑い中での着物は大変と思われましたが、たくさんの親子連れが赤、桃、白の着物姿で桟俵に乗せられた紙で作った男女の流し雛を持って現れました。大勢のカメラマンの中で無病息災を祈りながらそっと川に流し入れました。
鳥取市用瀬町
2004年鳥取市に編入されたが、それまでは八頭(やず)郡用瀬(もちがせ)町として町制が施行されていた用瀬。小さな山あいの町で昭和を思い起こさせる木造の無人駅が迎えてくれる。如何にも宿場町といった静かな落ち着きのある町中を、綺麗に清んだ水路が流れているのが印象的。
私が訪れたのは数年前のもちがせ流しびなマラニック大会以来2度目。マラソンの後、町を散策し駅前のカフェで休んで再びぶらり。駅からほんの少し歩いた所を横断するように流れる川沿いに昔を偲ばせる土蔵や屋敷。その清流に小さな水車や、色とりどりの鯉のぼりが流れていたのが忘れられなかった。
町を挙げての歓迎
少子化で特に地方の人口減少が叫ばれているが、日本一人口の少ない鳥取県の特に中山間部では深刻な問題。用瀬も例に漏れず人口減に直面し、今年は町で唯一の買い物拠点といえるスーパーの閉鎖騒ぎに翻弄された。何とか引き継ぎ会社が現れて閉店は免れたが、そんな慌ただしい中で行われた用瀬流し雛。
しかし、そんな心配事を吹き飛ばすように町は人で溢れ、全国から集まったカメラマンや、カフェに並ぶ若者で賑わっていた。メイン通りの商家や住宅ではご自慢の雛を飾って公開し、玄関内に招き入れてくれる。清流の裏通りでは裏手の土蔵前に雛飾りや、石で出来た男女の人形でもてなしてくれる。
着物姿で雛流し
小さな町のメイン通りや裏手、丘まで上って歩き回り、賑わっている屋台で腹を満たして流し雛の行われる千代川に向かう。初めて見る行事にワクワクドキドキが止まらない。観光客用の雛流しは午前中から行われているが、メインは午後2時過ぎからの親娘の流し雛。
メイン通りから線路を横切り、国道53号を渡ると千代川に架かる朱塗りの橋。その橋の向こうには金閣寺を模したという鮮やかな流しびなの館が目に飛び込んでくる。橋の手前を川原に下りると左右にカメラマンが待ち構えている。天気は良いが強い向かい風。その中を数組の着物姿の親娘連れと男児。
一斉にシャッターチャンスを待つカメラマンの中、親子一緒に雛の乗った桟俵をそっと流し入れる。すぐに小さな手を合わせて願い事をする愛らしい子供達。向かい風に翻弄されながら少しずつ少しずつ流されていく桟俵。今日のように向かい風に翻弄される事も待っているだろうが、負けないでと祈らずにはいられなかった。